「小学校の歯科検診の紙を見てドキッとした」——段原や宇品、千田周辺で子育て中の保護者の方から、こんなお声をよくいただきます。「うちの子、矯正が必要なの?いつから始めればいいの?」その疑問に、歯科医師が成長段階ごとに正直にお答えします。
「まだ乳歯だから様子を見よう」と思っていたら、小学校の歯科検診で「要受診」の紙が届いた、というケースは珍しくありません。しかし、"いつ始めるか"は一律に決まるものではなく、お子さんの歯並びや顎の状態、そして何よりも成長のどのステージにいるかによって、大きく異なります。この記事では、乳歯列期・混合歯列期・永久歯列期という三つの段階ごとに、どのような治療の選択肢があるかを丁寧に解説します。
「矯正はまだ早い?」——検診で指摘されたとき保護者が最初に感じる疑問
学校歯科検診で「要受診」と書かれていたら
学校歯科検診の通知に「歯列・咬合:要受診」と書かれていると、多くの保護者の方が「いきなり矯正?費用は?」と不安になられます。しかし、この判定はあくまでスクリーニング——ふるい分けの結果です。
学校での検査は歯科院で行う検査と異なるスクリーニング検査であり、「健全:0」「要観察:1」「要医療:2」にふるい分けがなされますが、小学校低学年から中学校にかけては顎の骨の成長発育が盛んで、かつ乳歯から永久歯への交換がある時期であるため、短時間に判定することは容易ではないとされています。
つまり、検診での指摘は「必ず矯正が必要」を意味するわけではなく、「かかりつけの歯科医師に詳しく診てもらってください」という意味です。検診の紙を受け取ったら、まず落ち着いて専門家に相談することをお勧めします。
当院では、初診時に個室のカウンセリングルームにてお時間をとり、治療の必要性・内容・費用を丁寧にご説明しています。マイクロスコープで撮影した画像をモニターで見ていただきながら、現状をご確認いただけますので、「見えない不安」を解消したうえで次のステップを考えられます。
「歯並びは自然に治る」は本当か?
子どもの歯並びの変化を経時的に追跡した研究によると、上顎前突(出っ歯)や叢生(乱ぐい歯)は、有する者の割合が学齢とともに増加していく傾向があることが報告されています。正中離開(前歯の隙間)のようにある年齢を過ぎると自然に改善する項目もありますが、叢生や出っ歯は自然改善が見込みにくいタイプの不正咬合です。
また、歯科疾患実態調査(厚生労働省)によると、12〜15歳で叢生のある者は34.5%(平成17年)から43.8%(平成23年)へと増加しており、歯並びに異常のある子どもは近年増えていると考えられます。[1]
「様子を見ていたら改善した」という場合もゼロではありませんが、タイプによって自然経過が異なることを知ったうえで、早めに相談するかどうかを判断するのが賢明です。
不正咬合の種類と「急ぐもの・待てるもの」
歯並び・かみ合わせの問題にはさまざまな種類があります。矯正歯科治療の対象となる不正咬合には、叢生(乱ぐい歯・八重歯)、上顎前突(出っ歯)、反対咬合(受け口)、開咬(奥歯でかんでも前歯が合わない状態)、過蓋咬合(かみ合わせが深すぎる状態)、空隙歯列(すきっ歯)などがあると、日本歯科医師会は説明しています。
このうち、反対咬合(受け口)は特に早期対応が推奨されるタイプの一つです。アゴの骨の大きさに問題のある受け口(骨格性反対咬合)などで、骨の成長を見極め、タイミングを選んでコントロールする必要がある場合には、治療の時期を何回かに分けることもあります。
乳歯列期(3〜6歳ごろ)にできること:MFTとマウスピース型の装置
この時期の矯正の目的は「顎の成長の誘導」
乳歯がすべて生えそろう3歳前後から、永久歯が生え始める6歳前後にかけての時期を乳歯列期と呼びます。この時期はまだ骨が柔らかく、顎の成長を望ましい方向に誘導しやすい特徴があります。
アゴを前後左右にずらさないと噛めない場合には、乳歯の時期でも治療を開始することがあります。
ただし、乳歯列期の介入で目指すのは「永久歯を今すぐきれいに並べること」ではありません。この段階での治療の目的は、悪習癖(口呼吸・舌の癖・指しゃぶりなど)を取り除き、顎の正しい発育を助けることです。
マウスピース型の装置——口周りの筋肉の使い方を整える
マウスピース型の機能的な矯正装置は、主に就寝中と日中の短い時間に装着し、舌や唇などの口周りの筋肉の使い方を整えながら、顎の発育を助ける装置です。歯に直接強い力をかけるのではなく、口呼吸や舌の癖など、歯並びに影響する習慣の改善を目指します。装着時間を守れるか、毎日のトレーニングを続けられるかで結果が変わるため、お子さんの年齢や生活のリズムも含めて検討します。
当院では現在、床矯正・拡大床・MFTなどの中から、お子さんの状態に合わせて方法を選んでいます。マウスピース型の装置については、今後マイオブレースの導入を予定しています。
MFT(口腔筋機能療法)とは——口の筋肉のバランスを整える訓練
MFT(Myofunctional Therapy:口腔筋機能療法)は、舌・唇・頬などの口周りの筋肉を正しく使えるよう訓練する療法です。装置を使わず、トレーニングを通じて歯列に悪影響を与える習癖を改善します。
矯正歯科や小児歯科の臨床において、口呼吸や舌突出癖などの口腔習癖が上顎前突や開咬の不正咬合を引き起こす要因になると考えられており、それらの口腔習癖を治療する方法として口腔筋機能療法(MFT)が行われています。[2]
徳島大学の報告によると、MFTを実施した小児20名(平均年齢7歳7か月)において、訓練前後で口唇閉鎖不全のある児は55%から35%へ、嚥下時舌突出のある児は100%から50%へ減少するなど改善がみられたとされています。[3]
MFTは装置を使わないため、お子さんへの身体的な負担が少ない点が特徴です。当院では専門のトレーニング指導も行っており、自宅での練習方法をわかりやすくお伝えしています。
混合歯列期(6〜12歳ごろ)が矯正開始の重要なタイミングである理由
「永久歯が生え変わる時期」が治療の分岐点
混合歯列期とは、乳歯と永久歯が混在する小学生の時期です。下の前歯から生え変わりが始まる6歳前後から、12歳ごろに永久歯列が完成するまでの約6〜7年間が、これにあたります。
日本小児歯科学会の全国調査によると、男子では下顎中切歯から上顎第二大臼歯までの萌出(生え変わり)期間は約7年で、女子でも約7年に長くなっており、混合歯列期は1930年代と比べて男女ともに長くなっている傾向がみられています。[4]
混合歯列期は、顎の骨がまだ成長途中であるため、歯を動かすだけでなく顎の幅や位置を整える「一期治療」が可能な時期です。この時期に適切に介入しておくと、永久歯がすべて生えそろった後の治療(二期治療)が軽減されたり、抜歯を回避できる可能性が高まります。
混合歯列期に選べる主な矯正装置
この時期に使用される装置は複数あります。それぞれの特徴を整理しておきましょう。
| 装置 | 主な適応 | 特徴 |
|---|---|---|
| 床矯正(拡大床) | 歯列の幅が狭い、叢生 | 顎を少しずつ広げる取り外し可能な装置 |
| MFT | 口呼吸・舌突出癖など習癖がある | 筋機能トレーニングによる根本改善 |
| 上顎前方牽引装置 | 骨格性の受け口 | 上顎の前方成長を助ける |
| ブラケット矯正(部分) | 特定の歯の移動が必要 | 歯に固定する金属のブラケット |
当院では、床矯正・拡大床・MFT・ブラケット矯正など、成長段階に応じた方法をご用意しており、お子さんの顎の骨格・歯の生え方・お口の習癖を総合的に確認したうえで適切な方法をご提案します。
叢生(乱ぐい歯)は混合歯列期に介入するとどうなるか
乳歯列期に正常咬合だった小児のうち、43.8%が永久歯列の段階で叢生になっていたという縦断研究があり、混合歯列期に叢生である歯列は、永久歯列になっても叢生であるものが多かったという報告(J-STAGE)があります。[5]
この研究が示すのは、混合歯列期に叢生のサインがある場合、そのまま待っていると永久歯列になっても改善しないケースが多いということです。早めに歯科医師に診てもらい、「今すぐ動く必要があるか、成長を経過観察するか」を判断してもらうことが大切です。
永久歯列期(12歳以降)からの矯正——一期治療を受けなかった場合の選択肢
全ての永久歯が生えそろってからでも矯正はできる
「小学生の間に矯正しなかったから手遅れ」ということは、ありません。矯正治療によって歯を移動させることは何歳になっても可能ですが、その際、特に歯ぐきや歯を支えている骨が健康であることが必要な条件とされます。
永久歯がすべて生えそろった12歳以降は、成人矯正と同様の方法で治療を進めることが可能です。ただし、この時期以降は顎の骨の成長が概ね終わっているため、骨格的な問題を装置だけで改善するのは難しくなります。骨格的な問題が大きい場合は、成人後に外科的矯正治療が必要になることもあります。
成人矯正と小児矯正の一番の違い
小学生の段階(一期治療)での介入と、永久歯列完成後(二期治療)での介入の主な違いをまとめます。
| 一期治療(混合歯列期まで) | 二期治療(永久歯列以降) | |
|---|---|---|
| 顎の骨への働きかけ | 成長を利用できる | 難しい(骨格的には対応困難になる場合も) |
| 抜歯 | 回避できる可能性がある | スペース確保のため必要になる場合も |
| 装置の種類 | 取り外し可能なものが中心 | ブラケット・マウスピース等 |
| 治療期間 | 長くなりやすい(成長を待つ) | 1〜2年半が目安(症例による) |
当院では、成人矯正としてワイヤー矯正・マウスピース矯正・部分矯正・後戻り矯正に対応しており、永久歯列完成後にご相談いただいても治療の選択肢をしっかりご提示できます。
費用・保険の考え方
一般的な歯列矯正は、先天性疾患に伴うものを除いて健康保険の適用外(自由診療)となります。歯科矯正治療は一部の先天性疾患に合併するものを除いて健康保険の適用ではなく、比較的高額な実費が必要になることから、異常があっても治療に踏み出せない家庭も少なくないとされています。
費用については治療の種類・期間・使用する装置によって大きく異なります。当院では個室のカウンセリングルームにて、治療内容と費用の目安を事前にご説明しています。また、クレジットカード(VISA・Mastercard・JCB・American Express・Diners Club)でのお支払いに対応しておりますので、ご活用ください。
まとめ
- 検診での「要受診」はあくまでスクリーニングの結果です。 歯科医師に直接診てもらい、「今すぐ動くべきか・経過観察でよいか」を確認することが第一歩です。
- 乳歯列期(3〜6歳)は顎の成長を誘導するタイミング。 MFTなど、お子さんへの負担が少ない方法で口周りの癖の改善と顎の発育を助けます。
- 混合歯列期(6〜12歳)は矯正介入の重要な時期。 骨の成長を利用できる「一期治療」が可能で、叢生・受け口・出っ歯など多くのタイプに対応できます。
- 永久歯がそろった後でも矯正はできます。 ただし骨格的な問題が大きい場合は対処できる範囲が変わるため、気になったら早めのご相談を推奨します。
- 「受け口が気になる」「歯が重なっている」など自然改善が見込みにくいタイプは、成長を待つより早期相談が適切です。
「検診で指摘されたけど、どうすればいいかわからない」という段階からご相談いただけます。段原エール歯科・矯正歯科は広島バス「段原中央」停から徒歩2分、平日・土曜ともに診療しています。お子さんが怖がらないよう、待合スペースと診療スペースの両方にキッズルームを設置し、診療室には子ども専用の小さな入り口もご用意しています。初診時は個室のカウンセリングルームにてゆっくりご相談いただけます。WEB予約は24時間受付中です。お電話でのご予約・お問い合わせは 082-207-1500 まで。
はじめて受診される方は、初めての方へ(初診の流れ)もあわせてご覧ください。
参考文献
[1] 公益財団法人 日本学校保健会「学校保健ポータルサイト」より「子どもの歯並びについて(なぜ、なに、どうして? 学校保健 第6回)」gakkohoken.jp
[2] J-STAGE(日本顎口腔機能学会雑誌)「口輪筋の筋力、持久力の強化に対する有効なトレーニング法について」jstage.jst.go.jp
[3] J-STAGE(小児歯科学雑誌)「小児における口腔筋機能療法(MFT)の訓練効果について」jstage.jst.go.jp
[4] J-STAGE(小児歯科学雑誌)「日本人小児における乳歯・永久歯の萌出時期に関する調査研究Ⅱ」jstage.jst.go.jp
[5] J-STAGE(小児歯科学雑誌)「乳歯列期に正常咬合である小児の叢生発現の過程に関する縦断研究」jstage.jst.go.jp